ちなみに トリガーポイント注射療法の圧痛点ですが、中国系医学の『経穴(けいけつ:いわゆる ツボ)』と完全一致とは言わないまでも、代表的な経穴と かなり共通しています。
身体が不調な時、押すと響く痛みがある『圧痛点』を硬い物で押したり、温めると楽になった。この経験の積み重ねが鍼灸治療になったんだと思うんです。
また トリガーポイントは、痛みやシビレの出ている場所と離れているケースも有ります。
そして トリガーポイントと症状の出ている場所に線を引くと、経穴を結ぶ『経絡(けいらく)』の一部と一致する事が多いんですね。
局所麻酔薬の有効箇所と、伝統的な経穴が一致するというのが個人的に興味深く、先ほど”気”に関して
「異論が出るのを承知で言うと、”神経の信号伝達”が近いと思います」
と 言ったのは、そういう意味も含めての話だったんです。
なお 私自身の経験談なんですが、よく来て下さる患者さんに、ギックリ腰を繰り返し、慢性腰痛になっている30代の男性が居ました。
鍼をすると楽になると喜んで通院して下さったんですが、日にちが経つと ぶり返し、なかなか手ごわい腰痛だったんですよね。
ある時、その方が施術ではなく相談に来まして
「俺 心療内科で鬱(うつ)って言われてさ、うつ病の薬を飲んでたら腰痛 治っちゃった。こんなことってあるの??」
と言われたんです。
「うつ病薬の鎮痛効果スゲーな!!」
が、私の率直な感想だったんですが、先ほどの『脳の勘違い』について話したら、安心した顔でお礼を言われ、腰痛完治となりました。
ギックリ腰を 繰り返すうちに脳が
「自分の腰は痛いものだ」
と認識すると、ギックリ腰の急性期を過ぎても痛みを感じてしまう様です。
そして、働き盛りの30代ですから、
・「このまま腰が痛かったら どうしよう」
・「仕事に支障が出る」
・「働かないと将来が心配」
と 不安で押しつぶされると、脳がパニックを起こして 余計に痛い。そして、うつ病へ・・・
より正確に言うなら『鶏が先か、卵が先か』状態で、
「腰が痛いから うつ病になった」のか、
「うつ病になったから腰痛が取れない」のかが微妙ですが、
悪循環だったんでしょうね。
そして、鍼と鬱病薬という2つの相乗効果で悪循環を断ち切れた。それで慢性腰痛が改善したんだと思います。